福島原発事故から1年半が過ぎ、事故の記憶が風化したと答える人が福島県でも増えてきているという。今なお避難している人からすると、くやしい思いだろう。
政府は早々に終息宣言を出し、情報がろくに出てこないまま、食品の暫定基準値はゆるめられている。
放射能を含む震災のガレキは、全国に拡散し焼却処分され、「絆」の合言葉のもと事故による放射能で汚染されていない地域にまで及ぼうとしている。
そして、原発再稼動に向けて意欲を燃やす政財界人たちがいる。
なし崩し的に、原発政策を進めていく前提条件に、「放射能による健康被害はほとんどない」という国際機関(国連科学委員会)の認識がある。
放射能による健康被害とされているのは、白血病、白内障、甲状腺ガンだけだ。
子どもの甲状腺ガンにしても、1996年にやっと因果関係が認められた。
これに対し、ウクライナ政府報告書は、白血病、白内障、小児甲状腺ガン、心筋梗塞、狭心症、脳血管障害、気管支炎、など様々な疾患が、放射能が原因で起きているとしている。
ウクライナ政府報告書『チェルノブイリ事故から25年 "Safety for the Future"』翻訳
しかし、国連科学委員会は受け入れていないし、日本もこの見解をとっている。
確かに、放射能による健康リスクが軽微なら、ばら撒いても大丈夫だということになるため、原発を推進したい人や被害保障する側(加害者)にとっては都合が良い。
ウクライナ政府報告書の内容をかいつまんでみると以下になる。
放射能汚染地帯の住民など被爆した人から生まれた子ども32万人の調査結果
・1992年、被爆した人から生まれた健康な子どもは24.1%しかいなかった
2008年には、5.8%に減っていた
・慢性疾患のある子どもは、1992年が21.1%で、2008年には78.2%に増加
・病気の割合は、1992年と比べ2009年には、内分泌系疾患11.61倍、筋骨格系疾患5.34倍、消化器系疾患5倍、精神および行動の異常3.83倍、循環器系疾患3.75倍、泌尿器系疾患3.6倍に増加
・ガンは、事故前は10万人あたり200人で、現在は10万人あたり310人
・原発事故後、被爆した子どもたちが発症した甲状腺ガンは増え続けている
・原発近くからの避難民の死因のうち、ガンなど腫瘍以外の89%が心臓や血管(循環器系)の病気
・被爆した親から生まれた子どもの遺伝子に異常が見られ、健康レベルを低下させている
ウクライナ政府報告書は、2012年09月23日に放送された、NHK・ETV特集 シリーズ チェルノブイリ原発事故・汚染地帯からの報告 第2回「ウクライナは訴える」で紹介されている。
番組後半、日本での有識者によるワーキンググループが、一般人が居住し続けてよいと政府が決めた放射線量年間20mSvを妥当かどうか評価する場面がある。
ウクライナで見られる先述したような健康状態悪化の報告に対し、多くの委員は報告中に「科学的でない」と横槍を入れて反発している。
そして「20mSv」は健康リスクは低く、「十分にリスクを回避できる水準」と答申し妥当とされた。
「食品と暮らしの安全 第3回ウクライナ調査報告書」は、ウクライナでの健康被害の原因の一つを、「食品からの放射能」と見ている。
調査した3地域とも空間線量は、毎時0.08程度、高いところで0.13μSvであるため、外部被爆とはならず、内部被爆が健康被害の原因とする。
第3級汚染地域ではライ麦、ポテト、牛乳、チーズからセシウム137が検出されたが、非汚染地域では検出されなかった。
非汚染地域では、きのこから143~282Bq/kgと高いセシウム137が検出されており、第3級汚染地域のきのこのセシウム137は200~400Bq/kgになる。
現地の人の食生活から平均すると10Bq/kg相当になる。
日本の基準100Bq/kgからすると非常に低い汚染で、健康被害が出ていることになる。
明るいニュースもある。
足や頭や心臓が痛いという26歳の女性を、汚染度がさらに低い地域に70日間、保養に行って安全な食事をしてもらったら、痛みがなくなったのだ。
内部被爆による健康被害が、低い線量でも起こるのであれば、今後の日本の方向は、「日本全国に放射能汚染をばら撒いて薄める」政策よりも、「危険地域に集めて管理する」政策を採るほうが良いことは言うまでもない。
ウクライナ政府報告書でも示され、最近の研究「ヤマトシジミにおける福島原発事故の生物学的影響」で放射能の遺伝的な障害が発表されている。
遺伝的障害のように、先の世代になればなるほど被害が強く現れるのであれば、なおさら非汚染地域を保つことが大事だと言える。
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